ローカルワーク in HOKKAIDO

HOME ローカルワークストーリー 河本 純吾さん(河本農場・ものそと研究所)

ローカルワークストーリー

田舎での子育てに感じた疑問から始めた活動が学童クラブに。
地域の大人達と一緒に子ども達の成長を見守っていきたい。

ものそと研究所のできるまで

河本純吾さんは津別町で代々農場を営む河本農場の5代目。高校卒業後に津別町を離れ、旭川市で保育士として働いていましたが、25歳に時に農業を継ぐため津別町に戻りました。翌年には同じくUターンしてきた若手農業者や飲食店の店主と一緒に「つべつべGROW」を結成し、町のイベントへの出店や自分たちで津別町のオリジナル商品の開発・販売やイベント運営を行うなど、地域で様々な取り組みを行っています。また、子どもに関わる仕事がとても好きだったため、農場の仕事がひと段落する冬の間は、児童館や保育所で働いていました。

子どもが小学生になり、この雄大な自然の中で子育てできるのはとても素晴らしいと感じつつも、隣近所に友達が少ないうえにバスの利便性も悪く、気軽に遊びに行き来できない環境の中、子ども達は休日も家にとじこもりがちになったそうです。周囲は大型農業機械が通行して危険なこともあり、自然の中で子育てすることに疑問を感じていました。また、保育士時代は「歩く」ことを大切にしていたのに、国道沿いの家の前からスクールバスに乗り散歩もできない環境も気がかりでした。

そんな中、スタッフそれぞれの自己実現ができる農場を目指したいという思いから「こども×しぜん×ものづくり」をコンセプトにした「ものそと研究所」をスタートさせ、年に一度ファミリー向けのイベントを行うようになりました。ものづくりのワークショップを中心にフードコーナーやライブを行うなど、とても楽しいイベントになり、参加者からも反響が大きかったそうです。

「4回目のイベントを終えてから、年1度のイベントだけでなく年間を通じて子どもたちの成長をみることができる『学童クラブ』をやりたい!という思いが強くなりました。以前お世話になった先生がとてもおもしろい学童クラブを展開していたことにも刺激を受けました」。閉所になった保育所を使用できることになり、河本さん達の思いに共感してくれた教育関係者の方々やご家族の後押しがあって、2017年6月に「ものそとキッズクラブ」はスタートしました。

子ども達が自分たちで考えて主体的に遊びを展開できる空間をつくりたい

ものそとキッズクラブは小学生を対象にした土曜学童クラブです。兄弟姉妹も少なく異年齢で遊ぶことも少なくなってきた子ども達の、タテの関係を大切にしています。大きい子が集団をまとめ小さい子はその姿をみて「憧れ」て育ち、また大きくなった時に同じように小さい子に優しくできる環境になったら良いなと考えています。

「学校でも頑張り、家でもやることがたくさんある現代の子ども達。その中間でホッとできて、自分を出せて、話を聞いてくれる『ヘンテコな大人』がいて、自分たちで考えて主体的に遊びを展開できる空間をつくりたいと思いました」

この場所ではこれをする!というルールはほとんどなく、基本的に自由だそう。でも自由ということは自分の行動に自分で責任を持たなくてはならないということ。スタートした頃は子ども達に気を使って楽しめているか気になったり喧嘩の仲裁に入ったりしていましたが、子ども達と共に楽しい経験を重ねる中で信頼関係ができ、喧嘩も子ども達同士で折り合いをつけられるようになったり、特に高学年の子たちを中心にお手伝いをしてくれる場面が増えてきました。活動の最後にみんなで部屋の掃除をしていますが、子ども達の中から「分担制にしよう」と声が上がり、今では交代でスムーズに行っています。

自由にものをつくり外遊びを楽しむキッズたち

活動は「楽しいことをしよう」を大前提に、季節を通じての外遊びや自然に触れることに大切に取り組んでいます。春から夏は水遊びや泥遊び、バスに乗って町のプールへ行ったり、夏休みにはお泊り会をしたり、川の浅瀬で遊んだりもしています。

自分の手でものを作り出すことの楽しさをよく知っているキッズ達は、いろいろなものを作ります。外では草花を使ってカフェごっこ。葉っぱでお金を作ったり、メニューもたくさんあって本格的です。偶然始まったお祭りごっこでは、発泡スチロールに着色して串にさして焼き鳥を作ったり、ティッシュと色水でかき氷を作ったりと、イメージが広がりそれをどんどん形にしていくキッズ達の姿に、河本さんはいつも感心してしまうそうです。

また、みんなで作って食べることも大切にしています。毎回おやつを手作りし、ピザやドーナツ、ゼリーやアイス、牛乳パックを燃やして作るホットドッグや、たき火でつくる焼き芋などのキャンプメニューもあるそう。少しずつでもお手伝いしてもらい、みんなで作って食べる楽しさを共有しています。

とにかくこの「ものそとキッズクラブ」が大好きで、家族の予定を断ってでも毎回休まず来てくれるキッズ達。
「保護者の方達も始めは『何をやるんだろう?習い事でもないのにお金を払って預けるってどうなんだろう?』という思いがあったとは思いますが、キッズ達の『楽しい!また行きたい!』という姿に、興味を持って暖かい目で見てもらえていると思います」

地域の大人達と触れ合う中で、子ども達にいろんな生き方があることを知ってほしい

河本さんには、この地域でやるからには地域に愛される存在でありたいという思いが強くありました。町のバスでプールに行ったり、キッズクラブの活動場所である旧本岐保育所付近を散歩したりしていると、「何が始まったんだ?」とまちの皆さんは興味津々です。地域の方達にとって、まさに「子は宝」。近くの学校が閉校されてからほとんど姿を見なくなった子ども達が、また集まって何かをやっている、それだけで目を細めて暖かく見守ってくれています。

また、親や先生以外の大人と出会うことも、ものそとキッズクラブの魅力のひとつです。キッズ達は河本さんご夫婦のことを、親しみを込めて「しょちょー」、「れなっち」と呼びます。ここにいるのは何かを教える先生ではなく、共に楽しみ成長していく仲間としての大人です。さらに以前から河本さんとつながりのある、キッズ達に影響を与えてくれるであろう大人達にお願いして実現したイベントもたくさんあります。

津別町相生地区の私設美術館「シゲチャンランド」のシゲチャンこと立体作家の大西重成さんと、同じく相生地区を拠点にアート活動をしている「ネオフォーク」の皆さんとは、原人の衣装を作って原人になってパレードをしました。
また、「NPO法人森のこだま」の上野さんご夫妻と四季の森に入って自然を学んだり、野菜直売所「L・teやさいcafé」の「てるちゃんしぇんしぇい」とスムージーを作って実験したり、折り紙認定講師の「さとしぇんしぇい」に折り紙の楽しさを教えてもらうなど、子ども達は個性豊かな大人達とこの地域だからこそできる楽しい経験を積み重ねています。

「どんなことにも真剣に取り組み、貪欲に楽しさを追求するキッズ達は本当にすごいと思います。そして、さまざまな大人達と触れ合う中で、子ども達が将来生きていくうえでの選択肢を増やして、いろんな生き方があることを知ってほしいと思っています。地域とつながることで、『いろんな大人達があなた達の成長を楽しみにしているんだよ、見守っているんだよ』と伝えていきたいと思っています」

現在7名のキッズ達ですが、河本さんは今後もう少し人数が増えたらいいなと思っています。少人数の良さをいかしつつ、この楽しさをもっと伝えていきたいそうです。 「キッズクラブとしては自然と触れ合い、ひとりひとりが主体的に遊びを展開する中で、お互いを思いやれる集団づくりを続けていきたいと思っています。そして『ものそとキッズクラブ』を卒業して中学生や高校生になっても、この場所を懐かしく思い出し、ふらっと顔をだしてくれるような、そんな場所になっていけたらいいですね」

ローカルワークストーリー 一覧へ

TOP