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ローカルワークストーリー

「ここなら何かできそう!」と感じて移住。
まちの人達の思いを実行に移すためのお手伝いを仕事に。

大手IT企業を退職して起業。酪農家達の熱い思いにふれ、別海町に移住

廣田洋一さんは岩手県出身。県内の高校を卒業した後、米国オレゴン州の大学に進学し、コンピュータ-・サイエンス(情報処理)を学びました。帰国後に入社した「Intel」では、マーケティングや新規事業開発を担当するなど様々な事業に携わり、海外赴任も経験しました。入社から25年の節目に退社をしてITコンサルティング業務を行う「GenKids株式会社」を起業。キャンピングカーを手に入れ、全国でITを使いこなせていない中小企業のお手伝いができないかと考えていた頃、「テレワーク」という働き方を導入している「DUNKSOFT」という会社に出会います。

別海町では、総務省の地方創生テレワークプロジェクトとして、2015年に滞在型テレワークの実証実験を実施していました。廣田さんは、DUNKSOFTの方から実証実験の被験者として声をかけられたことがきっかけで別海町を訪れ、テレワークセンター宿泊施設である旧光進小中学校教員住宅に滞在しました。

そこは見渡す限り牧草地が広がる場所。廣田さんは、教員住宅のお隣で牧場を経営されている島崎さんと仲良くなります。島崎さんは、生乳の自主流通グループのリーダーでもありました。島崎さんやその仲間達と話をするうちに、「ここなら何かできそうだ!」というニオイを感じたと言います。

「テレワークだけでは移住までは考えなかったと思います。熱い思いを持つ酪農家の皆さんと話をするうちに、その思いを実行に移す手伝いができるのではないかと感じたことが移住の決め手になりました」。 4人のお子さん達にも手がかからなくなったこともあり、2016年の11月に単身で別海町に移住しました。

「忘己利他」の精神で、地域の人達の思いを実行に移すためのお手伝いを

「移住期間は3年」と最初に決めた廣田さんは、仕事の拠点を別海に移し、精力的に別海での事業を進めてきました。現在は生乳の自主流通グループ「ちえのわ事業協同組合」のコンサルティングを中心に、起業支援と酪農家のバックオフィスの作業を請け負う「株式会社ほらり」を立ち上げ、酪農ヘルパー派遣事業等の起業支援や運営支援も行っています。

「仏教の教えで、『忘己利他(自分のことを忘れ、他の人々のために尽くす)』という言葉が好きなんです。酪農家の皆さんは、熱い思いを持っているけれども、そこから実行に移すのが苦手。その部分で自分がお手伝いをすることで事業として動き出したり、新たな起業や雇用を生み出すことが自分の役目だと思っています」

廣田さんの活動により、多くの会社が立ち上げるとともに、新たな雇用も生まれ、道外からの移住者の雇用にもつながっています。しかも、働き方はテレワーク。お隣の家までも数㎞離れている牧場地帯では、テレワークという働き方は効率的です。

この日お話をうかがったのは、廣田さんが事務所と呼ぶ場所。「ここは島崎さんの事務所兼ちえのわ事業協同組合の事務所で自分の事務所ではないんだけど、仲間が集まる場所。場所を決めず、いろんな場所で仕事をしていますよ」。お住まいの旧光進小中学校教員住宅をご案内いただいた時も、スマホ片手に仕事の打合せ中。その表情は常に笑顔です。

「このまちでの一番最初の知り合い」というコンセプトで移住をサポート

廣田さんは移住後間もなく、役場や地元団体や企業と官民一体で別海町を中心とした道東への移住促進事業を企画・運営する「ほらり協議会」を立ち上げました。

WEBサイトの作成は、漁業とグラフィックデザインを兼業している「NAGI GRAPHICS」が担当。移住者や地元住民のインタビュー記事が多数掲載されています。インタビューは主に廣田さんが行いましたが、他にも多くのまちの人達が記事の作成に関わっています。このインタビューを通じて知り合いが増え、短い期間に人の輪がどんどん広がっていきました。

「『このまちでの一番最初の知り合い』というコンセプトでほらり協議会の活動をしています。知り合いがいない地方の小さなまちでは仕事や住む家を探せませんから、まずはまちの人とつながることが大切です。ここに移住したいと思う人達に必要な情報を提供して、まちの人とつなげる役目をしたいと思っています」

一方で、ただ北海道の自然が好きだからとか、何となく都会の生活に疲れたからとか、そういう気持ちで移住を希望している人には移住を勧めないという廣田さん。移住そのものを目的とするのではなく、しっかりとした目的を持つことが大切だと言います。

「例えば牧場をやりたいという目的をもった人や、地域の良いところも悪いところも分かっていてUターンを希望する人達にはしっかりとサポートしていきたいです。まちに戻ってきた人達に『仕事あるよ!』と言えるように、雇用を生み出すことにも力を入れたいと思っています」

»ひがし北海道への移住応援サイト、ほらり

地域の魅力に気づくことも、仕事の幅を広げられることも、移住者だからこそ

廣田さんは、酪農業という基幹産業があること、そしてその産業に従事している人が多いことが別海町の一番の魅力だと感じています。その魅力は日本一を誇る生乳の生産量や規模の大きさだけではありません。家族で酪農業を営んでいると近隣で助け合わなければ仕事も生活も成り立たないため、昔から互いに支えあう暮らしが根付いていました。だからこそ、自分のようなよそ者を受入れてくれる空気があり、いろんなことに挑戦できると言います。

「まちの人口は15,000人程ですが、大きすぎず小さすぎず、ちょうど良い大きさだと感じています。がんばれば数年で町の人みんなに会うことができるでしょ?そのくらいの規模が一番ですよ」

廣田さんが運営をサポートしているちえのわ事業協同組合の生乳は関東に出荷され、「別海のおいしい牛乳」として関東圏でのみ販売されています。別海町の厳選酪農家が牧草や飼料にこだわった特別な生乳だけを使用した牛乳は大変な人気で、1日に1万本売れているそうです。店頭で目にする人を含めると、もっと多くの人が毎日別海という名前を目にしています。

「移住者だからこそ地域の魅力に気づいて仕事の幅を広げることができると思っています。自分がその役割を果たすことで地域の人達が動き出して、『別海ってなんか元気だよね!』って思われるところまで持っていけたらいいですね」

このまちで自分がやれることがたくさんあり、仲間がいる。何より楽しいからここにいる

移住を決めた頃、廣田さんは「3年で何も変わらなければここにいてもしょうがない」と、滞在期間を3年に決めました。でも今はまだまだここでやれることがたくさんあると感じています。茨城県にいるご家族も最初はすぐに帰ってくるだろうと思っていたようですが、一番下のお子さんの高校卒業を機に、奥様も別海に来ると話しているそうです。

「酪農家の皆さんに、もっともっと気づきを与えられる存在になりたい。例えば、酪農業は牛の世話の他に事務処理の仕事が多いんです。これまでは家族の中でなんとかやってきたようですが、もっと効率化を図れるようにして、そこで雇用も生まれるようにしたいですね」

廣田さんは、地域の人達の気づきを促すことで新しい仕事が生まれ、そこがうまく機能するようにお手伝いをして動かしていくことで、まちの活性化に繋がると考えています。その中で自分の稼ぎを生み出す方法を考えていきたいと言います。

このまちを訪れた時の「ここなら何かできそう」という直感は、2年を経て「これからもまだまだやれることがある」という実感に変わりました。 「このまちで自分が必要とされている間はここにいるつもりです。仲間もできたし、何より楽しいからね」

まちと人が元気になることを喜びとして楽しく仕事に取組む廣田さん。ずっと同じ場所に留まるという感覚には自分には薄いと言いますが、まだまだ別海に留まるつもりだそう。これからも活躍の場をどんどん広げていきそうです。

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