ローカルワーク in HOKKAIDO

HOME ローカルワークストーリー 伊藤 香織さん(カヤニファーム)

ローカルワークストーリー

日本最北端の地に移り住み、人生初の養鶏をスタート。
この地ならではの魅力を餌に、宗谷の旨みが詰まった卵を届けます。

「消費する生活」から「生産する生活」を求めて

もともと札幌で過ごしていた伊藤香織さん。仕事で忙しい日々を過ごし、その当時の生活っぷりを「消費するだけの生活」と表現していました。ある時、畑仕事のアルバイトなどに挑戦し、土と触れあう機会の中で少しずつ「こういう道もありかも」という思いが浮かんできたと言います。そして、養鶏場であれば小さなボリュームから始めることが出来るということを知った香織さんは次第に興味を持つようになりました。そんな時に、現在のカヤニファームが身を置く場所で農場を営んでいた友人が別の場所に移住することになり、住まいを譲ってもらうことに。「全てタイミングが合ったんです」と香織さんは話します。

稚内の自然の豊かさ、外遊びの楽しさを子どもたちに伝えたい

そして旦那さまである伊藤輝之さんと共に稚内市上勇知という場所に移住。輝之さんは栃木出身で、教育を志していた方。その後違う仕事に就いたものの、常に心のどこかに「教育」というキーワードが存在していたと言います。そして上勇知という場所に移住し、輝之さんは「ゆうち自然学校」を立ち上げます。市内の子どもたちはもちろん、近隣市町村の子どもたちが集まり、キャンプや親子での自然体験を通して、外遊びの楽しさを伝える活動をしています。この自然学校では輝之さんが代表を務め、カヤニファームの方は香織さんが代表を務めるという、互いに協力し合っている二人の関係。輝之さんは「カヤニファームに関しては、僕は下っ端なんでね」なんてジョークも交えながら話してくださいました。

生き物と向き合う繊細な仕事

いざ上勇知で自分の住居を手に入れ、養鶏をスタートさせようと思った香織さん。しかし、養鶏に関して教えてくれる人が周りにいなかったため、本を読んで知識を集め自分なりにスタートしたそう。そのため最初は失敗の連続。養鶏を始めた季節が冬だったということもあり、寒さに弱いヒヨコたちを死なせてしまったと言います。それならばと、次は温度管理を徹底的に行った結果、過保護に育てすぎて体の弱いヒヨコとなってしまったのだとか。その繊細さは、今だからこそ習得したものの、当初は大変だったようです。そういった失敗を乗り越え、試行錯誤の末に行き着いたのは平飼いを基本に、抗生物質などの薬剤を始め栄養補助の人工添加物も一切使わない、自然がお手本の飼育法。こうした苦労を乗り越え、「宗谷のしおかぜたまご」が誕生しました。

地元に根付いているからこその良さ

今は、稚内市内近郊のみの販売にとどまっていますが、それに関しては「小さなまちなので、お客様との距離が近いのが良い」と話します。一方的につくりました!買いました!という関係ではなく、互いに想い伝い合えることが魅力の1つです。

「この仕事で辛いことはありますか?」と聞いてみると、香織さんはこう話します。「う〜ん、今は特別思いつきませんが、立ち上げ当初は大変で辛いこともありました。知らないことがありすぎて。また、自分が生産した卵の営業にお店に直接赴くも、餌の関係で黄身の色が薄いのを見てうーん、と首をかしげられる日々。トライしてみて分かったことがたくさんありました」。色々な苦労を乗り越えてきた香織さん。直接顔を見て自分が生産した卵への想いを伝えることができ、また逆に相手の気持ちも理解できる、そんな距離感が地域ならではの良いところなのかもしれません。

ちなみに、「宗谷のしおかぜたまご」の黄身が薄い理由の1つは、一般的な飼料のトウモロコシではなく、お米を主食としているから。また、この地ならではのものを使用したいという想いから、宗谷近海の鮭、利尻昆布も使い、それがカヤニファームの卵の旨みの秘訣となっています。風味豊かなコクと旨みのある、宗谷の海の恵みが詰まった卵となって多くの人に届けられています。

隣の家までの距離は遠いけれど、ドアtoドアの便利な生活

稚内市、と言えども伊藤さんご夫婦が住んでいるのは市内から車で30分ほど離れた上勇知という場所。生活に不便はないのでしょうか?と尋ねてみると首を横に振るお二人。今はネットもあるし、車もあるので買い物には困らないと話します。また、子育てについても「一番上の子どもは現在小学校に通っていますが、農家も多いこのエリアではスクールバスが家の前まで来て稚内の学校まで送り迎えをしてくれるんです。ドアtoドアですよ」と笑います。そうなると、この環境ではお子さんがお友達と遊ぶ!というのは簡単ではないのでは?という疑問に関しては、「そうなんです。だから事前に親同士で話し合っていく必要があります」と。しかし、逆に親同士の交流も生まれて良いのかもしれませんね。

移住者の自分を受け入れてくれた地域の人々

また、移住してきた当初この地区の方々の親切さにも触れたそう。「縁もゆかりもない人間が突然上勇知に現れたので、最初は正直怪しんでいた部分もあるかと思います。でも、私たちに興味があるんだろうな、というのも感じていて(笑)」と笑う香織さんの横で、輝之さんが言葉を継ぎます。「鹿撃ちの人たちが山へ行く途中、うちの家の前を通ったんですが『鹿撃ちに興味ある?』と声をかけてくれたんです。もともと興味があったので話を聞いて、その後その方々のサポートにより無事狩猟の免許を取得しました(笑)こうやって移住してすぐに地域の人たちが気にかけてくれたおかげで、すんなり輪の中に入っていけたのだと思います」

現在は養鶏を営むカヤニファームと、輝之さんが率いる自然学校の二足のわらじ。夫婦同士、協力して経営していますが、そんなお二人のように上勇知という場所は自分好みの暮らしができる場所だと教えてくださいました。例えば、ご自宅の敷地内にはピザ釜が置かれていたり、ハンモックがあったり・・・秘密基地のような場所まであり、大人も子どももワクワクするそんな場所。輝之さんの「好き」が詰まっています。土地が広いというのも、魅力の1つ。何もないけれど、自然があり、それを遊びに変えて豊かな生活を過ごすことができるという上勇知の魅力です。

ここで暮らし、夢を追い続ける背中を子どもたちに見せながら歩み続ける

かつては栄えていた稚内も、人口減少が目立ってきたまちの1つ。移住してみて、昔からその地で生活していた方々から「かつては」「あの頃は」という話をよく聞くと言いますがお二人にとっては知らない過去。想像することしかできません。

「人口が減っていき、仕事がないからとまちを出る若者が増えています。だからこそ、自分の世代は元気でいなくちゃ!って思っています。そして、子どもたちに大変だけど楽しそうだなって思ってもえらると嬉しい。これからもカヤニファームを通して、面白い暮らしを発信していきたいです」と話す香織さん。

そして、伊藤さんご夫婦が決めていることが1つあります。それは、子どもの前であえて自分の夢を語ること。「お母さん、次はこんなことをやりたいなー」と、ふとした時に子どもたちに話すそうです。「そうすることによって、子どもたちに『夢って語っていいんだ』って知って欲しいなと思って」とまだ小さい2人のお子さんを優しく見つめる伊藤さんご夫婦。

最近では、新しい鶏舎を建てたいと考えクラウドファンディングに挑戦もし、無事に達成。その後念願の新しい鶏舎を建てるなど、1つ1つ夢を実現させていく姿は、きっと子どもたちにも届いているはずです。「ずっと仕事として続けていきたい。この暮らしを楽しく続けていくことが今後の目標です」とお二人は笑顔で話してくださいました。

ローカルワークストーリー 一覧へ

TOP